今回のテーマは、仮想通貨が売られる傾向とその理由です。
代表的な仮想通貨 Bitcoin と他の仮想通貨の値動きは正の相関が強いので、Bitcoin を例に挙げて考察します。
Bitcoin 相場下落と米国債利回り上昇
上記チャートを見ての通り、ここ1年間、Bitcoin の相場が下落する傾向にあります。
1年で約25%円安が進み、円の交換価値が相対的に下がっています(下記チャート、赤い折れ線参照)。
日本円の交換価値が下がると、1Bitcoin あたりの日本円が高額になるはずですが、そうなっていないので、日本円の下落以上に Bitcoin も下落しているのでしょう。
一方、米国債10年ものの利回りが約2.5倍になっています(年利約3%)。
結論から先に言いますと、管理人はこの米国債の利回り上昇とその原因が、仮想通貨相場の下落傾向を生んでいるとみています。
アメリカの政策金利上昇
米国債の利回りが上がっているのは、アメリカでインフレ(インフレーション)が進んでおり、その抑制策として、アメリカの中央銀行に当たるFRBが政策金利を上げているからです。
フェデラルファンド金利とは、フェデラル・ファンド(Federal Funds)レートのことで、米国の銀行が連邦中央銀行に預けている無利息の準備預金です。
米国では銀行間で日々このファンドの過不足を調整し合っており、そのときの金利を指します。
いろんな論点がありますが、この記事に関わる点に絞って書けば、フェデラルファンド金利が上がると、遅かれ早かれ米国債の利回りが上がります。
利回りが良くなった米国債に資金が集まり、市場で流通する通貨の量が減るので、通貨の価値が上がる(デフレーション、つまり、インフレーションの逆)というシナリオを描けます。
上記チャートをご覧いただくと、2022年に入ってから過去10年間に例がない急激な上昇を記録しているということが視覚的に分かると思います。
アメリカのインフレ
どうしてこれほどまでに急激にフェデラルファンドを上げる必要があるのか?
前述の通り、インフレを抑制するためです。
現在のインフレ率は年率7%を超えています。
年率7%のインフレがどういうものかというと、
(極端な話ですが)アメリカで前年比インフレ率7%が10年続いたら、ドルの価値が半分になります(※)。
(※ 7%の10年複利で約2倍になることを参考にしたざっくり計算です)
上記ざっくり計算によると、1ドルで買えていたものが、10年後には2ドル払わないと買えなくなります。
年金生活者などの収入源に限りがある方の中には、生活が破綻する人も出てくるでしょう。
そうならないためにも、苛烈なインフレを抑制することが急務です。
アメリカの政策金利は、インフレが収まる(傾向がみえる)まで上がり、それにともなって債券の利回りも上昇するでしょう。
インフレに負けない投資の難しさ
アメリカ人にとって、インフレによりドルの交換価値が下がるので、ドルではなく別の資産でもっておきたいところです。
ところが、インフレは世界中で起こっており、避難先として別の通貨を買っておくという選択はリスクを伴います(通貨によっては、発行している国のデフォルトリスクも抱えることになります)。
金や銀のようなコモディティは、インフレに強いと言われますが、いまいち方向感がつかみにくく値動きが大きいので、ドルコスト平均法でコツコツ買うのが無難です。
インフレの避難所として、高額のポジションをとって一安心というタイプのものではありません。
インフレ率以上に稼げばいいのですが、株や仮想通貨取引にはリスクが伴うので、増やすつもりが減らしてしまうこともままあります。
債券投資のチャンス?
インフレと、その抑制策としての政策金利上昇、それに伴う債権利回り上昇というこの流れに便乗して、債権利回りが上がるのを待つ投資方法が選択肢として浮上します。
外貨建てなので為替リスクはありますが、一定に利息がつく外貨建てMMFに資産を交換しておいて、債権利回りが上がってから債券を買うのです。
現状、アメリカのインフレ率が7%だとしても、今後ずっとインフレ率が7%で推移することはないでしょう。
債券の利回りが高くなってから債券を買えば、インフレに負けない可能性が高くなります。
また、複利運用で一定の効果が期待できます
(年利3%の複利で25年運用すると、投資額の約2倍
年利4%の複利で25年運用すると、投資額の約2.6倍
年利5%の複利で25年運用すると、投資額の約3.3倍
年利6%の複利で25年運用すると、投資額の約4.2倍
年利5%の複利で25年運用すると、投資額の約5.4倍
になります(参考:Ke!san)。
インフレで物価が倍になっても、債券投資で投資額を倍にできればトントンです。
債券利回りがインフレ率を上回っていれば、インフレに勝って投資した甲斐があったということになります。
なお、債券は、単に利回りが良ければよいというわけではありません。
デフォルトリスク(つまり、破産などにより貸した金が返って来ないリスク)を回避する必要があります。
アメリカの財務省が発行する米国債なら、デフォルトリスクはほぼありません。
逆にアメリカの財務省が発行する債券がデフォルトを起こす状況では、金などの現物投資以外総崩れになります。
もはやファンタジーですが、数ある金融商品が紙切れ同然になる状況の中で、終盤で資産価値がゼロになるのが米国債でしょう。
そして、数ある金融商品の中でも、資産価値がゼロになるリスクが小さい米国債が、昨今のインフレとそれに伴う債権利回り上昇により、有望な投資先になる可能性があります。
(例えば、可能性があるシナリオとして、今後インフレ抑制策にともなってアメリカの米国債利回りが5%まで上がり、インフレ率5%まで下がったとししましょう。
今後、利回りが良くなった米国債が買われて、市場に流通する通貨量が減り、相対的に通貨の交換価値が上がり、インフレ率が下がるが、買った債券の利回りは5%のまま!! 債券利回りとインフレ率の差だけ投資で勝てる。
ま、全部私の妄想ですけど……)
インフレがきっかけで起こる債券利回り上昇は、またとない債券投資のチャンスかもしれません。
そして、それはアメリカ人だけでなく、日本人を含め世界中の投資家にとってもそうです。
さらに、普段債券に投資している人達だけでなく、仮想通貨に投資している人にとっても言えることなのです。
結論
以上のような債券投資のチャンスに乗るために、仮想通貨を売って債券投資の準備資金をプールしている……これが、昨今の仮想通貨下落の一つの要因でしょう。
参考までに、債券投資のチャンスに乗る方法を説明します。
通貨はドル建て、債券はデフォルトリスクが少ない割に利回りが大きくなることがある米国債、証券会社は、米国債が買えて特典が多く使いやすいSBI証券 又は 楽天証券です。
2.ドル建てMMFを買う(今後、円高になると予測するなら日本円でもっておく)
3.利回りが良くなったら、ドル建てMMFを換金して(または、持ってる日本円で)、米国債の既発債(トレジャリーストリップス米ドル建 yyyy/mm/dd満期 ゼロクーポン債)を買う
この3ステップです。
なお、投資は自己責任でお願いします。