相続の基本的な知識の整理と、家族が亡くなった時にやることをリストにしました。
意外と膨大です。
サイドバーに、目次を表示する設定にしましたが、目次が表示しきれなくなりました笑
- 知識の整理
- 家族の死亡後、やることリスト
- 銀行預金を解約する
知識の整理
相続
相続とは、人の死亡により、財産上の権利義務の一切を他の者が引き継ぐことをいいます。
財産上の権利義務
財産上の権利義務とは、自動車などの動産、土地や建物といった不動産、預貯金や有価証券の他に、他人に何かしてもらう権利(債権)も相続の対象となります。また、義務の例として、借金も相続の対象となります。
相続人
相続人とは、お亡くなりになった方(法律用語で「被相続人」といいます。)の財産上の権利義務の一切を受け継ぐ人のことをいいます。そして、誰が「相続人」にあたるかは、法律によって決められております。次のようになります。
被相続人
お亡くなりになった方のことを、法律用語で被相続人と呼びます。「相続を被(こうむ)る人」、言い換えると「相続される人」という意味です。以下、お亡くなりになった人のことを被相続人と呼びます。
法定相続人の決め方
・法定相続人の決め方 ルール1
法律上、被相続人の配偶者は常に相続人となります。この配偶者は、戸籍上の妻や夫のことです。同居していたり、子供がいても、役所に婚姻届を出していない場合、相続の対象になる配偶者ではありません。
・法定相続人の決め方 ルール2
配偶者に加え、被相続人と一定の血族関係にある方も次の順番で相続人となります。
第一順位 被相続人の子(婚外子や、お腹の赤ちゃんも含まれます)
第二順位 被相続人の父母、祖父母等(直系尊属という)
第三順位 被相続人の兄弟姉妹
ルール1の通り、被相続人が亡くなった時に配偶者が生きていれば、配偶者は常に相続人になります。他に第一順位の人がいれば、第一順位の人も相続人になります。
第一順位がいなければ、第二順位が、
第一順位と第二順位がいなければ、第三順位が相続人になります。
法定相続の例外
1.相続欠格
相続欠格(そうぞくけっかく)とは、法律が定める相続人になる資格がない人のことをいいます。
意図的に被相続人や自分と同順位か自分より優先して相続人になれる人を死亡させたり、死亡させようとした人や、騙したり脅したりした上で遺言を作成させたり、撤回させたり、遺言の作成や撤回を妨げたり、遺言書を偽造・変造したり、破棄したり隠したりした人がこれに当たります。
2.廃除
廃除(はいじょ)とは、被相続人が、家庭裁判所に申し立てるか遺言を遺して、相続人の地位を奪う制度です。相続人から虐待を受けたり、重大な侮辱を受けたりしたとき、またはその他の著しい非行が相続人にあったとき等のように、相続させない正当な理由がある場合に認められます。
代襲相続
代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは、被相続人が亡くなった時に、子が死んでいた場合、孫が相続する制度です。子も孫も亡くなっていた場合、ひ孫が相続します。
また、第一順位の子が元々いなくて、第二順位の親などの直系尊属が死んでいた場合、第三順位の兄弟姉妹が相続人になりますが、兄弟姉妹が死んでいて、甥(おい)や姪(めい)が生きている場合、甥(おい)や姪(めい)が相続人になります。
家族の死亡後、やることリスト
死体の安置場所を探して、死体を運び、安置する
日本の法律上、死亡してから24時間経たないと火葬にできません。
冷やすなど、死体の腐敗が進まない措置がとれる安置場所を探して、そこに運び、火葬するまで安置します。
たいてい、葬儀をするしないに関わらず、葬儀屋さんが関与します。
死亡診断書をもらう
病死の場合は病院で、事故死の場合は警察でもらえます。
死亡届を提出して火葬許可を申請する
市区町村役場に申請します。
死亡届を出せる方は以下の方々です。
・同居の親族
・家主、地主又は家屋もしくは土地の管理人
・同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人、任意後見人、任意後見受任者
埋葬許可書をもらう
火葬場でもらいます
親戚などに周知する
葬儀の手配をする
葬儀屋に電話しましょう。被相続人が互助会に入っていると、そこに葬儀に関する手配を任せることになりそうです。
埋葬(納骨)の手配をする
先祖代々の墓に埋葬するか、生前に買った墓に埋葬するか、遺族が新たに墓を買うか、ケースバイケースです。
住まいの冷蔵庫の中のものを処分する
応急処置的に必要になります。
故人の退職手続をする
故人の勤務先に連絡します。
世帯主変更届を提出する
亡くなってから14日以内に、市区町村役場で手続きします。
健康保険、介護保険の資格喪失届を提出する
亡くなってから14日以内に、市区町村役場(被用者保険は勤務先、健康保険組合)で手続きします。
公共料金や定期的に料金が発生するサービスを解約する
電気、ガス、水道、NHK、固定電話、携帯電話、wifi、光回線、Amazonプライム、ネットフリックスなどのサブスクを解約しましょう。
クレジットカードを解約する
被相続人の財布などに入っているクレジットカードや、郵送物からカード会社を特定し、連絡しましょう。
運転免許証、パスポートを返納する
運転免許証は警察に、パスポートはパスポートセンターに返納します。
年金の受給を止める
年金事務所で手続きをします。
住民税・固定資産税の請求先を変更する
市区町村村役場で手続きします。遺言書の検認をしたり、遺産分割協議をした後で固定資産税を誰が負担するかはっきりします。
遺言書の有無を確認する(検認手続)
ご家族がお亡くなりになったら、まず、遺言書を探してください。
遺言書が自筆証書遺言か秘密証書遺言なら家庭裁判所で検認の手続きをとってもらう必要があります。
家庭裁判所に問い合わせてください。
なお、遺言書を法務局に預けていたり、公証人が立ち会って作った公正証書遺言なら、家庭裁判所での検認の手続きをとる必要がありません。
戸籍を収集する
法定相続情報一覧図を取得する
法定相続情報一覧図は、被相続人の相続関係を一覧にした家系図のようなもので、法定相続人が誰であるのかを法務局の登記官が証明したものです。
法定相続情報一覧図があれば、戸籍謄本の代わりに相続関係を証明できるようになり、相続登記や預金の解約などの相続手続が楽になります。
遺された財産や借金を確認する
土地・建物の権利証
土地や建物の権利証を探しましょう。登記済権利証や登記識別情報というタイトルの書類があったら、それが土地の権利証です。
固定資産税課税(公課)証明書
被相続人が持っている不動産のうち課税対象になっている土地建物が載っています。
名寄帳
土地と建物の固定資産税課税台帳(補充課税台帳)を所有者ごとにまとめたものです。
市区町村役場でもらえます。各市区町村内に持っている土地や建物が把握できます。
課税対象になっていない、土地や建物がもれる可能性があります。
公図
法務局でもらえます。隣接地との境界線がかかれた地図です。これを見ることで、他の資料では見落とした私道などの存在が確認できることがあります。
備忘録
気の利く方ですと、財産の内容を一覧にして遺してくれることがあります。
金庫
空かないときは、プロに頼みます。
預金通帳
解約する時、戸籍謄本や、戸籍の代わりに法定相続情報一覧図の提出が必要になります。
法定相続証明情報一覧図は、戸籍を集めてから入手できます。
戸籍を提出するにせよ、法定相続情報一覧を提出するにせよ、どちらにしても早めに戸籍を集めておきましょう。
郵便物
どの銀行や、消費者金融などとの付き合っていたか分かります。
もし、被相続人に借金があって、借金がプラスの財産を上回っている場合、自分が相続すると分かった時から3か月以内に、相続放棄か限定承認の手続きを取ることを検討すべきです。
時間切れになると、単純承認した扱いになり、被相続人の借金を背負うことになりかねません。
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メール
亡くなった家族のメールを確認します。ネットバンクや証券会社の口座が判明することがあります。
株、投資信託、FX、等の有価証券
主に、郵便物やメール、備忘録から存在が明らかになります。
ほふり(証券保管振替機構)に照会して、株式や投資信託の証券口座の開設先を確認することもできます。「ほふり」については、後述します。
銀行預金を解約する
銀行に必要書類を提出します。
相続人であることと、相続分を証明する必要があるので、戸籍謄本や遺産分割協議書」または「法定相続情報一覧図と遺産分割協議書」を用意します。
ほふり(証券保管振替機構)で、株式等の証券口座の開設先を確認する
株式や投資信託のような有価証券を持っている場合があります。
少なくとも、年に一回は証券会社から郵便物が届くので、残っている郵便物を確認すればどこに口座を持っているか分かりますし、後で郵便物が届いて口座の開設先が分かることがあります。
ただし、相続放棄をするかどうか判断したり、相続財産を漏れなく把握してから遺産分割協議を始めたい場合は、証券保管振替機構に照会します。
証券保管振替機構で、証券口座の開設先を確認できます。
証券保管振替機構>ご本人又は亡くなった方の株式等に係る口座の開設先を確認した場合
借金が残っていないか信用情報を確認する
信用情報機関に照会すれば、故人が遺した借金がないか。債権者が誰かなどが調べられます。
信用情報機関は、CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターがあります。
それぞれ守備範囲が違いますので、3つの機関に照会すれば、企業からの借入についてはほぼ網羅できます。
なお、個人からの借入や、貸金業者として登録していない闇金から借入れについては信用情報機関で照会できません。
単純承認
プラスの財産もマイナスの財産もそっくり受け継ぐことです。
相続財産を処分したり、自分が相続すると分かった時から3か月以内に、相続放棄や限定承認をしないと、単純承認したと見なされます。
相続放棄
相続人になることを放棄することです。
自分が相続すると分かった時から3か月以内にする必要があります。
相続財産を処分してしまうと、単純承認したことになり、相続放棄は認められません。
相続放棄することで、最初から相続人ではなかったことになります。主に、管理が面倒な財産を相続せずに済ませたり、借金を背負うのを避けるために使われます。
相続放棄すると、他の相続人の持分が増えたり、自分より相続の優先順位の低い人が相続人になります。
被相続人が多額の借金を遺す場合、配偶者+第一順位の相続放棄→第二順位の相続放棄→第三順位の相続放棄というように、リレー式で相続放棄することがあります。
家庭裁判所で相続放棄の手続きをすると(郵送可)、家庭裁判所から本気で相続放棄するのか確認を取るための郵送物が届きます。
それに、最初に相続放棄を申し立てた際に書いた内容通りに書いて返送することになります。
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限定承認
被相続人のプラスの財産で借金などのマイナスの財産を清算して、プラスの財産が残ったら、それを相続し、マイナスの財産が残っても借金を背負わずに済ませられる制度です。
自分が相続すると分かった時から3か月以内にする必要があります。
相続財産を処分してしまうと、単純承認したことになり、限定承認は認められません。
家庭裁判所に財産目録を提出する必要があったり、手続きが大変です。
そのため、マイナスの財産がプラスの財産を上回っていることがはっきりしている場合は、相続放棄が使われることが多いです。
一方、マイナスの財産がプラスの財産を超えているかどうか分からない場合には、限定承認をするのが良いでしょう。
戸籍を集める
法定相続人の範囲を把握したり、銀行預金の解約や、株や債券といった有価証券の相続手続、土地や建物の相続登記をする際に、自分が相続人であることを客観的に証明するために、戸籍が必要になります。
遺産分割協議をする
遺産分割協議は、相続権がある人や相続分を譲り受けた人達の間で、被相続人の財産をどのように分けるか決めるか決めることです。
遺言書で特定の財産を誰に相続させるか事細かに書いてあれば、遺言書通りに遺産分割することになるので、遺産分割協議は必要ありません。
遺言書があっても、持分の割合が指定されているばあい、例えば、「長男には、全財産の半分を相続させる」などと書いてあれば、相続分があるものの間で遺産の分け方を話し合う必要があります。
遺産分割協議をするのに、必ずしも、一度に一か所に全員が集まる必要がありません。
電話で打ち合わせをして、
遺産分割協議書の原案を作り、
それに実印を押し、
他の相続人に実印を押してもらって、
印鑑証明書をつけて、さらに別の相続人に郵送し、
……というように、原案を作って、リレー式にハンコと印鑑証明書を集めるという方法でも作れます。
遺産分割でもめたら、弁護士の出番です。
依頼者に有利な結果になるよう交渉してくれるでしょう。
逆に他の相続人が弁護士を立てて来たら要注意です。
公平でないと感じたら、すぐには結論を出さず、法律相談などで落としどころを検討しましょう。
遺産分割協議が整ったら、書面に残します。
遺産分割協議成立後の書面作成は、弁護士や司法書士ができます。協議に参加した法定相続人全員の署名と実印による押印をし、印鑑証明書をつけましょう。
遺留分減額請求をする
遺言書に、家族の誰かに「全部相続させる」と書いてあった場合、相続人になる予定だった人(推定相続人という呼び方をする)が、法定相続分の半分を請求できる制度です。
例えば、被相続人に配偶者と子供2人いて、被相続人が「配偶者に全財産を相続させる」という遺言書を遺していた場合、子供2人はそれぞれ、法定相続分として4分の1ずつ持っているので、遺留分として法定相続分の半分、この場合、それぞれ8分の1ずつ配偶者に請求することができます。
遺留分減額請求は、「遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時」から1年以内に行使をしなければなりません(民法1042条)。
所得税の準確定申告をする
死亡から4カ月以内に、税務署でやります。
青色申告を引き継ぐ
被相続人が自営業の場合で、相続人が事業を継ぐ場合に行います。
銀行・証券口座の名義変更・解約をする
死亡保険金をもらう
死亡保険金は、保険契約の中身によって受け取る人が異なります。保険会社に確認しましょう。
不動産の名義変更(相続登記)をする
司法書士に頼みましょう。
自動車の名義変更をする
葬祭費、埋葬料、高額療養費、死亡一時金をもらう
葬祭費、埋葬料、高額療養費、死亡一時金がもらえる場合があります。市役所や保険組合が管轄です。死亡から2年以内という制限があります。
未支給年金、遺族年金、寡婦年金をもらう
未支給年金、遺族年金、寡婦年金がもらえる場合があります。
年金事務所や市区町村役場が管轄です。死亡から5年以内という制限があります。
姓を旧姓に戻す
結婚して配偶者の苗字を名乗っていた人は、配偶者の死後「復氏届」を市区町村役場に提出すると、旧姓を名乗ることができます(戸籍法95条、民法751条)。
死後離婚をする
配偶者が死亡しても、配偶者の親との親族関係(姻族関係)は残ります。市区町村役場に姻族関係終了届を提出すると、姻族関係は終了します。