- 記事の要点
- 不確実性が高まる時代における「安全資産」の再評価
- 従来の「10%ルール」の根拠
- 状況の変化:中央銀行の「金シフト」の具体的な証拠
- ドル安リスクと代替資産としての金
- 保有比率の再検討
- まとめ
- 補足:金投資の方法
- 関連記事

記事の要点
・従来の金保有割合10%ルールの根拠と、現在の国際情勢の変化を解説しています。
・各国中央銀行の金購入が加速しており、特に新興国の金準備比率が大幅に上昇している事例を紹介しています。
・ドルの信認低下とドル安リスクへのヘッジとして、金の重要性が高まっている現状を指摘し、保有比率の見直しを推奨しています。
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不確実性が高まる時代における「安全資産」の再評価
「投資のポートフォリオに占める金の保有割合は10%以内にすべき」——これは、長らく投資の世界で語られてきた一つの「定説」です。しかし、世界情勢が激変し、金融システムへの不信感が高まる現代において、この「10%ルール」は本当に適切な基準なのでしょうか。
従来の「10%ルール」の根拠
金は、株式や債券が暴落する「有事」の際に価値を保ちやすいインフレ・ヘッジおよび安全資産としての役割を果たしますが、配当や利息といった収益を生み出しません。
資産の10%以内という比率は、金のリスクヘッジ効果を享受しつつ、ポートフォリオの成長を妨げない、バランスの取れた割合として推奨されてきました。
状況の変化:中央銀行の「金シフト」の具体的な証拠
近年、この「10%ルール」の前提となる国際情勢と金融環境は大きく変化しています。その最も顕著な動きが、各国の中央銀行による歴史的な金購入の加速です。
金保有を増やした主な国々:外貨準備に占める金比率の推移
特に新興国は、外貨準備の多様化と米ドルへの依存度を下げる目的で、金の純粋な買い手へと転じました。以下の表は、主要国の金準備比率が明らかに上昇していることを示しています。

2022年〜2024年にかけて中央銀行需要が非常に大きく、2022年1,082t、2023年1,037t、2024年1,045t、のように過去数年で1,000t超が継続しています(出典:World Gold Council)。
以上は、準備資産に占める金の割合の増加、「脱ドル化」の流れ、リスク分散の必要性の高まりを示す一例です。
参考までに、地域別金保有量は下記のようになっています(2025年9月8日現在)。

ドル安リスクと代替資産としての金
中央銀行がこれほどまでに金を購入する背景には、ドル依存リスクを警戒する動きが強まっているためです。
「脱ドル化」が招くリスクと根拠
米ドルの「武器化」
米国がドル決済網から廃除する経済制裁を多用したことで、ドルが地政学的な「武器」として機能するという認識が広がりました。特に新興国の国々は、ドル建て資産の安全性を疑問視するようになりました。
ドルインデックス(DXY)の推移
ドルインデックス(DXY)は米ドルの総合的な強さを示す指標です。
2010年代を通じて米国の財政状況の悪化や金融緩和の影響を受け、ドル建て資産への偏重を避け、リスク分散する傾向が強まっています。
2022年のFRBの急速な利上げでDXYは一時的に急騰したものの、長期的な米国の巨額な政府債務や国際通貨体制の多極化という構造的な問題は継続しています。

出典:TradingView

出典:TradingView
リスクオフ時にはドル高で金高のように方向が同じになることもありますが、
金は通常、このドルインデックスと弱いながら逆相関の関係にあります。
ドル安(DXYの低下)が進むと、ドル建て資産の価値が円換算で目減りするリスクが高まります。金はこのドル安リスクへのヘッジとして機能するため、ドル離れの局面では重要性が増します。

赤紫線:ドルインデックス
どちらも、縦軸はパーセンテージ(%)
出典:Investing.com
↓↓ ドル円が円安ドル高なので、ドルの弱含みに気づきにくいですが、
ユーロ円と比べると、近年の「ユーロ > ドル > 円」の強さに気づきます。

赤:ユーロ/円チャート
(どちらも10年)出典:SBI証券
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保有比率の再検討
グローバルな不確実性が高まり、ドルの信認が揺らぐ現代において、個人投資家も中央銀行と同じ視点を持つことが重要です。
金は、単なるインフレヘッジではなく、ドルの信認低下リスクに対するヘッジとして、その重要性が高まっています。
もし、全世界株式ファンドやS&P500連動ファンドのウェイトが大きいなどポートフォリオがドル建て資産に大きく偏っているなら、従来の「10%ルール」に固執せず、金の保有比率の見直しを検討する時期に来ているかもしれません。
↓↓全世界株式の64%がアメリカ株

月次報告書(作成基準日 : 2025年8月29日)より
バックテスト(Portfolio Visualizer )①
全世界株式と金でポートフォリオを作った場合のバックテストをしてみましょう。
アメリカ市場のETFを使うので、ドル建てでの検証となります。

Portfoilo 2: VT:GLD=50%:50%
Portfoilo 3: GLD(金ETF)100%
【条件】
初期投資100ドル、毎月100ドル積立
投資期間 2016年1月~2025年9月まで
リバランスは毎年1回
出典:Portfolio Visualizer < Backtest Portfolio
外部サイト:
毎月100ドル積立した場合、
全世界株式ETF100%、金ETF100%、S&P500ETF100%に投資するより、全世界株式ETFと金ETFに半分ずつの割合で投資した方がリターンが高いという結果になりました。

「シャープ・レシオ(シャープレシオ)」は、投資の効率性を測る指標であり、投じたリスク1単位あたりでどれだけのリターン(収益)が得られたかを示すものです
それぞれのシャープレシオを見ると
全世界株式100% 0.68
全世界株式と金半分ずつ 0.98
金100% 0.83
S&P500 0.85
という結果になりました。
(結果は選んだ期間・通貨建て・リバランスルールに依存するため、必ずしも将来も同様とは限りません)
金は、全世界株式に対して相関係数が低く、おおむねー0.1~0.1の値で推移しています。
しかも、金は通貨に対して値上がりする傾向にあります。
全世界株式と金のように、それぞれ値上がりし、かつ、互いに相関係数が低い資産を組み合わせることで投資効率が上がる可能性があります。
参考までに、過去の相場では、どれくらいの比率で投資するとシャープレシオが高くなったか、Portfolil Visualizerの設定を変えて確認してみました。
すると、

VT:GLD=43:57で、シャープレシオが最大になりました。
金の割合を多くすると投資効率がいいという結果が出る理由は
最近、急激に金が高騰したせいかもしれません。
(結果は選んだ期間・通貨建て・リバランスルール・インフレの影響を反映させるかに依存するため、必ずしも将来も同様とは限りません)
他の期間でも検証したいですが、Portfolio Visualizerの無料版は、過去10年のデータしか利用できないので、2016年1月~2020年12月の5年間と、2021年1月~2025年9月の5年弱の期間でも、全世界株式と金を混ぜるとシャープレシオが高くなるか確認してみました。
バックテスト(Portfolio Visualizer )②
↓↓ 2016年1月~2020年12月の5年間

Portfoilo 2: VT:GLD=50%:50%
Portfoilo 3: GLD(金ETF)100%
【条件】 初期投資100ドル、毎月100ドル積立 投資期間
2016年1月~2020年12月まで
リバランスは毎年1回
出典:Portfolio Visualizer < Backtest Portfolio
外部サイト: https://www.portfoliovisualizer.com/backtest-portfolio
2016年1月~2020年12月までの期間では、
全世界株式に100%投資した方が高リターンでした。
それぞれのシャープレシオを見ると
全世界株式100% 0.77
全世界株式と金半分ずつ 1.04
金100% 0.79
S&P500 0.92
全世界株式と金に分散投資した方が、シャープレシオが高かったことが判明しました。
↓↓2021年1月~2025年9月の5年弱

Portfoilo 2: VT:GLD=50%:50%
Portfoilo 3: GLD(金ETF)100%
【条件】 初期投資100ドル、毎月100ドル積立
投資期間 2021年1月~2025年9月の5年弱
リバランスは毎年1回
出典:Portfolio Visualizer < Backtest Portfolio 外部サイト: https://www.portfoliovisualizer.com/backtest-portfolio
一番上の折れ線が「Portfoilo 3: GLD(金ETF)100%」のチャートです。
近年の金相場の高騰ぶりが見て取れます。
それぞれのシャープレシオを見ると
全世界株式100% 0.56
全世界株式と金半分ずつ 0.97
金100% 0.97
S&P500 0.74
「全世界株式と金半分ずつ」と「金100%」のシャープレシオがほぼ同じ値になりました(四捨五入しているのか、切り捨てているのか不明)。
バックテスト(myINDEX 資産配分ツール)③
他のサイトでも検証してみましょう。
「myINDEX 資産配分ツール」を使って過去20年間
ボラティリティ(資産価格の変動の大きさ)が小さくなる割合を調べると、
全世界株式:金の割合が、4:6くらいが最もボラティリティが小さくなることが分かります。
こちらは、円建てでの検証となります。
全世界株式に含まれる各資産クラスの比率を固定値にしているため、飽くまで参考程度に留めてください。

出典:「myINDEX 資産配分ツール」
「myINDEX 資産配分ツール」外部サイト:

「Portfolio Visualizer」 と「myINDEX 資産配分ツール」で、シャープレシオに違いが生じているのは、期間の長さが違っていることと、「Portfolio Visualizer」はドル建て 、「myINDEX 資産配分ツール」は円建てで計算しているためです。
また、全世界株式に含まれる、日本株、先進国株、新興国株といった資産クラスの比率は変動するものですが、「myINDEX 資産配分ツール」を使ったバックテストでは全世界株式に含まれる各資産クラスの比率を固定値にしているためです。
そのため、どちらかというと「Portfolio Visualizer」を使ったバックテストの方が確度が高いです。
金の割合を6割程度まで上げると成績がよかったのは、近年たまたま金のリターンが大きかったせいである可能性が高いです。
もっとバックテストの期間を区切って検証すると、無難な投資比率が解明できるかもしれませんが、割と根気が入りそうなので、また今度取り上げます。
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まとめ
これまでの定説であった「金保有割合10%以内」というルールは、国際情勢が大きく変化した現在、見直しの時期に来ています。
時代の変化:中央銀行が示す「金シフト」
従来の投資理論では、金は収益を生み出さないため、ポートフォリオの成長を優先して10%程度に抑えることが推奨されてきました。
しかし、2010年以降、ロシアや中国、トルコなどの中央銀行が外貨準備に占める金の比率を大幅に引き上げています。これは、世界的な「脱ドル化」とリスク分散の明確な意思表示です。
最大のリスク:ドルの信認低下とドル安ヘッジ
中央銀行の金購入の背景には、米国の巨額な政府債務、金融政策、そして経済制裁をドル決済網の排除に使う「ドルの武器化」に対する懸念があります。
ドルインデックス(DXY)のチャートが示すように、ドルの信認は揺らぎ続けています。金は通常、このドルと弱いながら逆相関の関係にあり、ドル建て資産の価値が円換算で目減りするリスクへの強力なヘッジとして機能します。
実証データが示す「効率性の向上」
過去のシミュレーション結果は、全世界株式(VT)のみに投資するよりも、金ETF(GLD)を組み合わせたポートフォリオの方がシャープレシオ(投資効率)が高くなる場合があることがあります。
金は株式と相関係数が低く、互いに異なるタイミングで上昇するため、組み合わせることでポートフォリオ全体のボラティリティ(変動幅)が小さくなることがあります。
金の比率を、資産の10%以内という従来の常識から外れたレベルまで上げる選択肢もあるかもしれません。
とはいえ、今回のバックテストが弾き出した金の比率6割はやり過ぎな感が否めません。
今後、近年のように金価格が高騰した時期をバックテストの期間に含めると、「金の比率が高いと良かった」のような結果になりがちなので、期間に依存しない再現性のある比率を検証によって解明したいです。
関連記事:本稿を書いた後、本格的に複数の期間でバックテストしました。
maruinocorocoro.hatenablog.com
なお、本記事は投資助言ではありません。
補足:金投資の方法
金投資の方法としては、手数料が安い投資信託をメインして、純金積立を補助的に利用するのが無難です。
投資信託と純金積立は、ドルコスト平均法で買付でき、それぞれ課税のされかたが違います。
| 項目 | 投資信託(株式型・債券型など) | 純金積立(現物金の売買) |
|---|---|---|
| 課税区分 | 金融所得課税(分離課税) | 譲渡所得(総合課税) |
| 税率 | 20.315%(所得税15.315%+住民税5%) | 所得税+住民税の累進課税(5%~55%)※長期譲渡所得は課税額1/2 |
| 課税タイミング | ・分配金を受け取った時・解約・売却して利益が出た時 | ・売却して利益が出た時 |
| 損益通算 | 可能(株式や他の投信、ETFと通算可) | 原則不可(同じ貴金属の譲渡益とのみ可) |
| 損失の繰越控除 | 可能(3年間繰越可) | 不可 |
| 特定口座・NISA対応 | 対応している(源泉徴収ありなら申告不要) | 対応していない(確定申告が必要) |
| 課税計算式 | 利益 × 20.315% |
短期(5年以下保有):課税対象 = (売却価格-取得費-譲渡費用 - 特別控除50万円)
長期(5年超保有):課税対象 = {(売却価格-取得費-譲渡費用 - 特別控除50万円) ÷ 2} |
| 特別控除 | なし | 年間50万円(譲渡所得控除額)あり |
信託報酬が安い投資信託
「SBI・iシェアーズ・ゴールドファンド(為替ヘッジなし)」
(信託報酬額 年0.1838% 隠れコストを含めると年0.21%という説あり。)
低コストの純金積立
SBI証券とマネックス証券の「買付時1.65%」が現状、純金積立の中で最も安い可能性があります。
KOYOは、年会費1500円ですが、買い付け時の手数料がかかりません。ハイペースで積み立てる場合、SBI証券やマネックス証券より低コストになる場合があります。
スプレッド
スプレッドについて補足説明します。
スプレッド = 業者の「売値」と「買取価格(買値)」の差
金を売買する業者は、
顧客に売るときは「売値(Ask)」
顧客から買い戻すときは「買取価格(Bid)」
を設定します。
この 売値と買取価格の差 がスプレッドです。
業者にとっては利益になり、投資家にとってはコストです。
純金積立では、買付時の手数料が明示されているので、スプレッドは普段意識されにくいです。
しかし、金を買い取ってもらう時の価格は、業者が設定した「売値(Ask)」からスプレッド分を引いた額になっています。
したがって、純金積立を比較する際は「手数料+スプレッド+年会費等」をトータルで見る必要があります。
| 証券会社 | 買付手数料(純金積立/金取引) | スプレッドに関する記載 | 補足・注意点 |
|---|---|---|---|
| SBI証券 | 純金積立(定額/定量):約定代金の 1.5 %(税込 1.65 %) | Webサイト上に「金現物のスプレッド:80円(買値と売値の差)」という記載あり (SBI証券) ただし、「スプレッドは固定されず、需給等で変動する」との注意書きあり (SBI証券) | スプレッド 80円というのは “金現物取引” の文脈での例示値。純金積立で実際に適用されるスプレッド幅は変動する可能性あり。 |
| マネックス証券 | 約定代金の 1.65 %(税込)(積立もスポットも同率) | Web上には “スプレッド(g 単位での差額)” の具体額を示す記載は確認できませんでした。ただし、購入価格と売却価格の差(スプレッド)は存在する旨の記載あり (マネックス証券) | 手数料率が明確示されている一方、スプレッドの具体円額提示は見つからず。手数料+スプレッドを含むトータルコストを問い合わせて確認すべき。 |
| KOYO証券 | 純金積立プランでは「購入手数料無料(0円)」との記載あり | スプレッドは “60円(税抜)” と記載されており、業界でも比較的狭めとの案内 (portal.koyo-sec.co.jp) | ただし、KOYO には年会費(年間 1,500 円 程度)が必要という記載もあるため、実質コストを合算して見る必要あり。 |
本記事がみなさんの長期投資のお役に立てたら幸いです。
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