今回は借金を消滅時効でチャラにする方法について書きました。
急に送られてくる催告書の意味
消費者金融などの貸金業者は、取立ての催促を長い間中断した後、急に書面で催促してくることがあります。
単に債務者が放置していた場合もありますが、貸金業者が利息で借金を膨らませてから、回収しようという手口に見えることもあります。
たいてい貸金業者が送り付けて来た催告書には、借金が残っていること、連絡がないと法的手続をとると脅しをかけ、
一方で、「和解に応じる用意がある」、「〇〇万円に減額する」と書いてあり、まるでアメとムチです。
ここで、下手に反応すると、債務を認めたことにされます。
債務を認めたことになると、消滅時効を援用すれば借金を返さなくてもよくなる状況であったとしても、時効が更新されて、向こう5年間は消滅時効を援用できません(民法152条、166条)。
消滅時効で借金をチャラにできる場合
貸金業者は、商法で定める「商人」ですので、貸金業者からの借入は「商行為」にあたり、5年で消滅時効にかかります(商法4条、503条、522条、民法166条)。
最後に借りた日、最後に返した日、最終取引日から5年を経過すると、消滅時効を援用して借金をゼロにできます。
消滅時効で借金をチャラにできない場合
知らないうちに、裁判されたり、支払督促を受けている場合があります。そういう場合、消滅時効を援用できません(民法168条)
消滅時効の援用の仕方
最終取引日を確認する
最終取引日を確認しましょう。
手元にある資料で確認する場合や、催告書に書いている場合、
「最後に借りた日」と「最後に返した日」の両方が5年以上前なら、消滅時効を援用することができます。
また、催告書に最終取引日が明記してあって5年以上前なら、消滅時効を援用できます。
分からない場合は、電話で聞くか履歴開示をします。
多少リスクを伴いますが、電話で聞くのが手っ取り早いです。
氏名住所や会員番号など、誰のことか分かるように告げ、手紙が届いたが、「最後に借りた日」「最後に返した日」「最終取引日」を教えてくれるように話します。
ここで、相手は債務の承認をするよう誘導してくることがあるので、借金は身に覚えがないなどと話し、債務を承認する趣旨ではないことをはっきりさせます。
ここで、消滅時効を援用する話しても特に問題はないです。すると、書面を送って下さいという話になることがあります。
電話で告げただけでは、決めてに欠けるので以下に書く、消滅時効援用通知を送ります。
消滅時効援用通知を配達記録付き内容証明郵便で郵送する
最後に借りた日」「最後に返した日」「最終取引日」から5年経過していることを確認したら、消滅時効援用通知を郵送します。
以下に文書の記載例を書きました、ご自身で送る際はコピペし、下線部を書き換え、配置を整えて下さい。
なお、商人である貴社は商法522条(※)の部分に関しては、令和7年4月1日以降は民法166条と書きます。
(債権者の住所) (左に寄せる)
(債権者の氏名、名称(社名)) (左に寄せる)
通知書(中央に)
先日、貴社より私、〇〇(氏名を書く)(以下、通知人)に対し「(通告書等、送られてきた書面のタイトルを書く)」なる文書が送付されてまいりました。これによりますと、貴社が通知人に対して貸金債権を有しており、その返済督促をされているようですが、通知人としましては、当該貸金契約には全く記憶がなく、したがって内容についても全く不明なものです。
また、仮にその金銭消費貸借に関する契約が存在し、通知人が返済の義務を負っていたとしても、商人である貴社は商法522条(※)の消滅時効の援用があり、少なくとも過去5年の間、時効中断事由が発生した記憶もないところから、すでに債権に消滅時効が成立しておりますので、本書をもって時効を援用いたします。
上記のとおりなので、通知人には支払う意思はなく、法律的な支払義務もありません。督促は直ちに中止して下さい。
以上通知します。
(令和〇〇年〇〇月〇〇日)
(通知人の住所)(右に寄せる)
(通知人の氏名)(右に寄せる)
参考資料:『債務整理事件処理の手引き』p136~137
配達記録付き内容証明郵便で送るので、文字数を数えやすいように、Microsoft Word などの文書ソフトで作成し、
「レイアウト」→「原稿用紙設定」→「スタイル」→ 「マス目つき原稿用紙」で設定を変え、印刷しましょう。
そうでなければ、ボールペンで原稿用紙に手書きで書いてもいいでしょう。
内容証明郵便の送り方
内容証明郵便は、誰から誰へどんな内容の郵便物を送ったか記録に残す郵送方法です。
差出郵便局
集配郵便局および支社が指定した郵便局です
すべての郵便局で送れるとは限りません。住んでいる地域の大きな郵便局で送れるイメージです。あらかじめ、差し出そうする郵便局に問い合わせます。
窓口に持っていくもの
同じ書面 3通(差出人用控、郵便局保管用、受取人への郵送用)
差出人および受取人の住所氏名を記載した封筒
内容証明の加算料金を含む郵便料金(配達証明もつけると、別途加算)
書面の文字数
字数・行数の制限
謄本の字数・行数の制限は、次のとおりです。
区別 字数・行数の制限 縦書きの場合 ・1行20字以内、1枚26行以内 横書きの場合 ・1行20字以内、1枚26行以内
・1行13字以内、1枚40行以内
・1行26字以内、1枚20行以内出展:郵便局のホームページ
なお、Microsoft Word で原稿用紙設定すると、20×20になります。
20×20の設定で上記例文の文書を作成すると2枚になります。
内容証明郵便の料金
加算料金は440円(2枚目以降は260円)
配達証明
いつ届いたかもはっきりさせるため、配達証明もつけます。
配達証明の加算料金
320円です。
専門家に頼むべきか
資格者に消滅時効を援用する場合の費用はピンキリです。
個人的なイメージとして、2万円~といったところでしょうか。
手続きが簡単だからという理由で安いところもあれば、借金がなくなるという効果が大きいのという理由で高額なところもあります。
借金の額に関わらず2万円で受任しているところあれば、2000万円の借金をゼロにしたので減額した2000万円の10分の1の200万円を請求したという事例もあります。
料金設定が自由なので、どちらも公正な料金です。
専門家に頼む際、料金や料金の目安を事前に確認しておくとよいでしょう。
ここまで記事を読んで頂いて、比較的簡単で自分でもできそうだと思う方もいるでしょう。
しかし、消滅時効が通用するのと、しないのでは、借金があるかないか、というとても大きな違いがあります。
費用を節約するよりは、弁護士や司法書士のような専門家に頼むのが最も確実で、しかも簡単だと言えるでしょう。
参考条文
商法 第4条 この法律において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。
商法 第503条 商人がその営業のためにする行為は、商行為とする。
2 商人の行為は、その営業のためにするものと推定する。
商法 第522条(令和2年4月1日の民法改正に伴って現在は削除)
商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、五年間行使しないときは、時効によって消滅する。ただし、他の法令に五年間より短い時効期間の定めがあるときは、その定めるところによる。
民法 第166条 (令和2年4月1日の民法改正に伴って変更)
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。
3 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。
第169条 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。
2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。